2013年 04月 09日
葉桜の季節に... |
葉桜の季節だからというわけじゃないが、歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』を読み終えたところだ。先の雨の週末、本の上に座り込んだまま眠ってしまった同居人に出鼻をくじかれた俺は、すっかりやる気をなくして、傍らの読み物に手を伸ばした。それがたまたまこの本だったってことさ。その後、空いた時間に読み進み、やっとのことで読み終えたわけだ。
....と、いつもと文体が微妙に違っているが、この文芸ロマン風なタイトルとは裏腹に、これはハードボイルド風の探偵小説であり、それにちょっと感染したせいだ。元探偵の俺が友人の親族の「事故死」の裏にある詐欺集団の犯罪を暴きだすまでの冒険の数々というのが一応のメインプロットなのだが、それに探偵見習いをしていたころのヤクザグループへの潜入調査と殺人事件の解決やら、地下鉄のホームで自殺しそうになったところを助けた女性との恋愛などがからみつつ話が進んでいく。というのは実はどうでもよくて、この小説は、そこに仕掛けられた叙述トリックで有名なものなのだそうだ。私はただこのちょっとロマンチックなタイトルに引かれて買っただけなのだが、おせっかいなユーザーレビューが、これが叙述トリックだなどと余計な情報を伝えていた(私もやっちゃってるわけだが)。叙述トリックとは、登場人物や語り手の属性を、読者が別様に勘違いしてしまうように作者が誘導するトリックのことで、読者は、たとえば実際には女性の登場人物をすっかり男性だと思い込んで読み進んでしまうといったことが起こる。もちろん作者は、「私はこの人物が男性だなんてどこにも書いてませんよ~。あなたが勝手に思い込んでただけですよ~。」としらばっくれることができる。この読者の思い込みが物語の謎の核心につながっていて、最後に自分の勘違いに気づかされ、謎が解き明かされて、読者は見事にだまされたことわかって唖然とするという仕掛けだ。手の込んだオレオレ詐欺みたいなもので、私はあまり好きじゃない。とはいうものの叙述トリックの醍醐味は、最後まで間違って思い込み続けさせられるというところにあり、途中で気づいてしまったりすると、面白さは半減する。
今回の、『葉桜の季節』では、私には不幸にもこれが起こってしまった。とちゅうで、まさか...ということはないよな、いくらなんでも、と思ったことが、しだいに確信に近くなり、結局そうでしたで終わってしまったので、すごく残念な読後感だった。おまけに、この叙述トリックそのものは物語の『謎』や推理にはまったく無関係という、ただやってみたかっただけみたいな感じなので、ますます残念。あとがきの解説にあるように、最後までだまされていたら、さぞかし最後が大どんでん返し、世界の逆転みたいな感じで楽しかったんだろうな。
...と近年、叙述トリックに妙な耐性をもってしまっている不幸な俺だ。
でもタイトルはすごく素敵だ、と思う。
葉桜の季節は、キャツらも機嫌がよいらしい。今日の上機嫌の一枚。
by Kalimbo_mwero
| 2013-04-09 21:12
| books
|
Comments(3)
うは、踊ってますね。ネコ踊りだー。
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ゴンギツネ
at 2013-04-10 09:47
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わああ、こりゃ阿波踊!と思ったが、前文『葉桜の季節』があったから、ひょっとして待てよ!!と思った。
写真の上下をひっくり返したら、なんのことはない。
チャイの友人が大いびきで寝ていた。
危うく引っ掛かる所だった・・・。
それで左上の、草の立ちようも納得できる。
追伸
今回の、この文章好きですね。
写真の上下をひっくり返したら、なんのことはない。
チャイの友人が大いびきで寝ていた。
危うく引っ掛かる所だった・・・。
それで左上の、草の立ちようも納得できる。
追伸
今回の、この文章好きですね。
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by
kalimbo_mwero at 2013-04-11 12:45